初心(うぶ)

 

テレビの音がうるさくて

部屋の明かりが眩しくて

ひとりきりが寂しくて

 

気づけばもう夏が来ていた

 

君のいない一週間はとても長い

君に聞いてほしいことはないのに

話したいことは山ほどある

 

私の口に残る癖 君の名前を呼ぶ癖

治らない 治せない

 

君を抱きしめたときの汗と洗剤の香り

顔を胸で圧迫される苦しさ

 

北海道で歩き回ったあの日

雨の中肉まんを分け合ったあの日

カラオケボックスでともに熱唱した日

ラブホテルで笑い合ったあの日

 

未練がましい女 病気ね

 

飽きる味 政治活動 販売員

キャッチ パリピ 電車の老人

近所のおばさん サラリーマン

 

社会なんてせいぜいこんなもの

流れ流されて もうここまで

 

アルコールでも体に入れてほろよいに

思い出しては会いたくなる気持ちに

甘いカルピスで自分を甘やかす

 

今年の夏

 

 

ものさし

 

 

豆電球だけが灯る部屋で、

私は冷凍マンゴーを食べる。

 

もの寂しいから爆音で音楽を聴いたよ。

 

爆音だから、父のいる部屋にまで

聞こえてしまうかもと不安だった。

 

でも何でも良かったんだよ。

ここだけは自分の居ていい場所さ。

 

そう思って爆音で流したんだ。

YouTubeに上げられている

踊ってばかりの国「それで幸せ」のライブ映像を聴いたのさ。

あまりにもその映像は眩しくて

私は携帯を伏せた。

 

音だけでわかるんだ。

見なくてもわかるよ。

 

見なくたって言葉も音もわかった。

 

この薄暗い部屋だったら、

私は君を見つけられる。

 

どこにいるのかも探せるよ。

 

この部屋だけが夜を孤独を感じられる場所。

 

きっと君が私に会っても、

「もう寝てしまうの?」と聞くだろうか。

 

私そんなことよりも、

「僕が見えるかい?」と囁いてほしいよ。

 

私は迷わず「見えないよ」と言って

君にキスをするから。

 

 

溶けかけのマンゴーは甘いが、

一つか二つ、酸っぱいものがある。

 

君と一緒に食べたのなら、

どういうんだろう。

 

君に会わないと何もわからないや。

 

 

ー長い遠い近い短いそんな命と愛

 

自由は二十歳になれば来ると思っていた。

 

幼き自分は馬鹿で滑稽だった。

 

そんなもの来ないのだ、"家"がある限り。

そう、縄なのだ。

私にとっては自身を縛るただの縄。

それなのに、私はその縄に怯える。

 

あなたの縄はなんだろう。

縄なんて無いのかな、無いのが普通か。

 

私はどうして今血縁関係のある人間を恐れて生きているのだろう。

無意識は怖い。

切れないのだ、その関係を。

 

生まれてこの方、記憶にあるうちで母親以外に褒められたことがない。

ずっと叱られ続けた約二十年。

もう自分の存在価値は"家"では見出だせない。

 

外に出ると、一人でいると、

ほんとの自分がふわっと見える。

 

そんなふうに私は生きたい。

自由をふわっと感じて、あの頃を笑える

そんなふうになりたい。

 

夜道を自転車で通った時に流れた涙は

しょっぱくもなく、暑さにやられて

生温く不味かった。

 

―あの日のように母と抱き合いたい

 

 

換気

神戸から帰ってきた私は怒られた。

 

 

「家事を疎かにして旅行なんて」

「女にしかできないことでしょ」

「遊び呆けて、楽だよな」

 

 

湧き出た感情は誰にも言えないぐらい汚い。

お土産と私はその場にポツリと置かれていた。

 

そして心なしにか私は一人で泣いていた。

止まらない、止まらなかった。

iPhoneから流れるMOROHAの曲たち。

イヤホンから聴こえる恋人の声。

 

あの瞬間、自分は人間だと思った。

 

昨日で彼と付き合って半年になった。

 

人様に話せるような悲しみ苦しみはないです。

 

誰にも見られたくない涙

誰にも聞かれたくない声

誰にも話したくない悲しみ

 

全て受け止めあって支えあって、いまがある。

私たちは生温い関係と言われるかもしれないが、

生温いお風呂のほうが落ち着くよ。

 

ふたりでかけ湯をして、慰め合い励まし合い、

違う場所で戦ってる。

 

次会えるのは1ヶ月半後かな?

もうその時には1歳老けてるね。

 

会えない時間に思い出なんて作れないかもしれない。

でも会えない時間、思い合うことはできるよ。

 

君がいなければ、

いま私はこうしてベッドですやすや眠れない。

 

 好きだよ、愛してる。

行動と共に伝えると燃え上がる言葉。

 

言葉だけは嘘っぽく聞こえる。

 

でもね、君の声に集中すると嘘か本当かわかる。

寂しいか嬉しいか、すぐにわかるよ。

 

どんなに思っても会えないから

せめて私のこころよ、飛んでゆけ。

 

 

ー優しく彼の頬にキスを贈ろう

チャイナタウンにて

明日、神戸で開催されるロックフェスに行く。

よって、今日は前乗りという訳だ。

 

私は朝の電車でRADWIMPSの"ラストバージン"を数ヶ月ぶり聴いた。

 

あの情景を今でも思い出して目が潤む。

情けないとも思い、前を向かなければとも思う。

そんなふうに忘れないための曲だ。

 

 

しかし、見知らぬ場所で過ごす時間は早い。

いつか私は大事なことを思い出せなくなる不安が押し寄せてくる。

 

完璧は装えるが、完璧にはなれない。

理性と感情の狭間に、いつも私達は生かされている。

 

明日は朝焼けを見る前に起きる。

不安だ。

私は起きて、明日も一筋に見つめられるのか。

 

今日もまた

そんなどうしようもないことを

煙たく思い、考える。

 

そして今日は友人の寝息を聞きながら眠る。

いつもとは違う。

新鮮さと解放感で、酔ってしまいそうな、

そんな夜を惜しみながら眠りにつく。

 

 

―チャイナタウンで食べた小籠包が

    今もまだ私を熱くさせるよ。

 

夜の月

 

地元の駅から自宅まで、

星を見ながら自転車を漕ぐ。

 

月が雲に隠れることなくハッキリと見えた。

 

私は月がハッキリと見えると嬉しい。

 

夜が私を許してくれるような気がして。

 

幸せと不幸せについてふわり考えていた。

まだそんなことを考える歳でもないだろうに。

 

傍から見たら、と言おうとしたが

傍から見てわかることでもない。

 

私にしかわからない感情や考えはある。

そういった類の密を持つのが、

人間の良い所ではないのだろうか。

 

そして大人は皆言う。

 

"幸せなんて続くわけがない。"

 

じゃあ今は?不幸せ?幸せ?

 

人は比較したがる生き物、

もちろん私もその一部だ。

 

"幸せなんて続くわけがない。"

じゃあ何を求めて私達は生きているのか。

 

わからない。

きっと神様でもわからない。

 

ああ、なんて不毛な問題提起だ。

こんなことばかり人は考える。

そしてつまらない励ましの言葉を並べる。

興ざめしてしまうよ、現代社会。

 

幸せなんていう物は、

自分の中にある天秤によって決められるわけで、皆一緒ではないんだよ。

 

だから"幸せになるためには"なんて言わないでよ。

そう考えている時点であなたは幸せになろうと努力をしている。

それこそが幸せであり、

輝くあなたが素敵なんだ!と言いたい。

 

前を向いて歩いて行こうぜ

 

なんて言えないけど、

おいしいご飯食べてる時ぐらいは

スマホ見ずに食べようよ、我が兄弟。

 

 

 

ー 愛しいあなたは今日もわたしを見てくれる