蜻蛉
忘れないうちに、書き記す。
あの時の日差し、体温、鼓動、湿っぽさ、
会話、沈黙、目、横顔、
ふたりだけが触れ合えるあの時間を、
別れさえも愛おしく思い帰った夜を、
夢の中でも思い返して、現実と空想を行き来した。
君の顔が見れずに、見たあの景色が
眩しくて、横を見ても眩しくて、
触れたいのに触れられなかった。
こんなに奥手な私は、幼稚で。
いつも通りがいつも通りにできなくて、そんな自分を君に見られていると思うと、
どうしたら好きになってくれるんだろうって
思いふけてしまう。
恋は曲者。
君は臆病だと言ったけど、
本当は私も。似た者同士なのかな。
似た者同士に見えないから、心が似てるって
確証を得たい。
君が私の言葉1つで火照ったあの気持ちを
私は知りたい。私にも見せてほしい。
幾つになっても貪欲な自分。
マイナスとマイナスがくっつくと
プラスになるんですよ
って、あの日差しを見て言った君。
オレンジ色みたい。
いつまでも敬語な臆病な君に
少し身を委ねて、笑う。
そんな時間を幸せと、愛と言ってもいいかな。
君の渦は、いつもプラスで、
今日も君の横顔に見惚れてしまう。