嘘と目と声
今年も君を忘れられなかった
私を見るあの悲しそうな優しい目は、私だけのものだったのに、もうそれは嘘。君は嘘しかつかない、ううん、嘘すらもついてくれない。何も話してくれなくなってしまった。ふたりの間の思い出は綺麗で、その思い出にふたりは恋をするくらいに綺麗なものだった。離れても、その思い出に触れるとふたりはまた恋をして、君はまたあの目をする。
私の中の君は、甘ったるい声で名前を呼んで、どこにも行かないでとしがみついてきた。久々に会った君は、甲高い笑い声でしゃがれた声で私の名前じゃなくて、自分の話をひたすらにした。もうふたりの時間、話は何もなくて、それでも私は君を嫌いになれなかった。君のことが好きな私が好きだから、今年もだめ。あの時、君は私に呪いを掛けたのかもしれないね。どこにも行かないでって。私も掛けておけばよかった。ふたりの呪いにしたらよかった。
こんな幼稚なこと、大人になってもするのね。
笑ってほしくて、同情してほしくて、褒めてほしくて、何かがほしくて
行動を起こすけど、見返りを求めてしまって、君があなたがいなくても見えなくても。
手が届く場所にいるのは私の方で、君はあなたは遠い場所で手を握り合った。
あのバンドマンが言ってた、あの言葉も
一方通行で、君はいつのまにか1人でジェットコースターに乗れていたり、もう250mlの牛乳パックを飲まなくなってたり。
私は今でもあの居酒屋に行って、あのメニューを頼む。今でも私はお酒が苦手。
ふたりの時間の重なり合ったのは幻みたいね。
その時間すら、私も君も手の届かない場所にいて、私たちは何かに溺れて、愛が見えなくなった。
それもひとりきりかな。
藻搔いたら、また私にも愛が見える?
見える見えない、わかんないけど、
君にまた会いたいから、また藻搔いてみる。
それでいいかな?私。
底なし沼から抜け出した私は、きっと魚。
きっと魚みたいに、きらきらと見えるよ。
君のあの寂しそうな目に。
待っていなくていいから、そばにいて。